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赤坂ひよこ日記

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必冊!赤坂 その二

「赤坂田町にあるその岡場所は、俗に「麦めし」と呼ばれていた。一ツ木の通りを隔てたうしろは小屋敷で、片方は溜池の堀に沿っており、堀のすぐ向こうには、山王の森が黒ぐろと高く、こちらへのしかかってくるように見える。」

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「将監さまの細みち」山本周五郎著 新潮文庫

主人公のおひろは病気の夫と、四つになる子供との生活のため、夫には内緒で珍しい「通い」で岡場所の女として働いている。そこに幼馴染が現れ、夫と別れて自分と一緒になって欲しいと口説かれる、さらに夫に岡場所で働いていることも知られたおひろは・・・。

「将監さまの細みち」は山本周五郎の「下町もの」の短編で赤坂界隈の描写がされているのは上記の一節のみ。この話が収録されている文庫「おごそかな渇き」にはこの話も含めて十篇の短編が収められている。
その中には黒澤明の「遺作シナリオ」で、死後、映画化された「雨あがる」も収録されていて、これはお薦め。

山本作品には「ヒューマニズム」が溢れている作品が多いが、今日では「陳腐」、「偽善」、「虚心」などと揶揄されてる嫌いがある。しかし、それは現代人が置き忘れたもの、失ったものだからこそ自分の心には響く。
山本作品を再読しては「心」洗われることしばしば。

いまさら、山本周五郎という向きも多いかもしれないが、黒澤作品、映画「赤ひげ」(原作者をして原作以上と言わしめた)を見て何か感ずるところあれば、まずは原作の「赤ひげ診療譚」から読んでみては。

最後に好きな山本周五郎の短編を一つ。「季節のない街」(現代物でこれもまた黒澤明によって映画化された。映画名は「どですかでん」。黒沢初のカラー作品も興行的には失敗。)に収録されている「プールのある家」。
真の傑作だと思う。
泣ける。

では、また来週。来週は近未来物。
by akasaka_hiyoko | 2009-07-22 00:34 | 赤坂番外編